2025.06.12

【女将ブログ】合言葉

ビールが初めて美味しいと感じた瞬間を今でも鮮明に覚えている。

思えば若い頃は、みんなでお酒を飲んで楽しく酔うという行為が好きなだけで、お酒自体が得意なわけではなかったと思う。
特にビールはただの苦い飲み物で、仕事終わりにぷはーみたいな感じが理解できずにいたし、もしや美味しくないけどみんな無理して飲む青汁的なものなのかと疑っていたりしていた。(今は青汁も美味しくなりましたね)

会社での飲み会といえば若手が瓶ビールを持って回り、注ぐ度に自分も注がれる今ではあまり見られない?風習もあった。謎に体育会系なところがあったので、そのしきたりを忠実に守った結果、悪酔いして毎回同期に迷惑をかける始末。

プライベートでも居酒屋でビールを頼むことはなく、カシオレかカルーアミルク。
缶ビールを買うこともなかった。

そんな私に転機が訪れたのは、会社を辞めて三浦に来てから。

毎日泥だらけ埃だらけになりながら、慣れない大工仕事をして、同時に営業開始に伴う手続きに追われ、生活費のためにアルバイトをする。
毎月通っていたネイルも美容院も行けなくなって、給料の半分以上を費やしていた洋服も買わなくなった。

なんとも言えないモヤモヤな気持ちのまま帰宅して、シャワーから出てきた私にころすけがキンキンに冷えた缶ビールをくれた。一緒に工事をしてくれてる仲間が差し入れで持ってきてくれてたんだっけ。

カラカラに喉が渇いていた私は言われるがまま蓋を開ける。

ぐびっと一口飲んだ瞬間、不思議とモヤモヤしていた気持ちが一瞬クリアになった気がした。
ビールってこんなに美味しいんだ。

失ったものや変わってしまったことは多いけど、この美味しさに気づけたのだから、ヨシとしようか。

なんて、そんな単純な人間ではないし、時には疲れ果ててどうしようもなく力が出ない日もある。

そんな時のふたりの合言葉。

「今日はビール買って帰ろうか」